私が◯◯専門弁護士と謳わない理由

離婚弁護士というドラマがありました。

離婚弁護士という語感からすると離婚に関する業務に専門特化して、他の業務については基本的に受け付けていないような印象を受けますが、どうでしょうか。

離婚専門、借地借家専門、刑事専門というように◯◯専門という表現で、自分の専門性を強調する弁護士、法律事務所、ウェブサイトも増えてきました。

このような事務所は、「専門」という言葉を使っている以上、もっぱらその業務だけをやっているような印象を受けますが、実際にはそれ以外の業務もやっていることが多い(後述)。

実は弁護士の専門性表示については、弁護士会でも議論があり、表立って◯◯専門という表示をすることは好ましいことではないとされています。

そもそも弁護士がどの基準をクリアすれば、専門と謳ってよいものか、全く確立された基準が存在しません。

弁護士歴1年めでも、その業務しか引き受けないという方針であれば、「専門」といってよい?(いや、まずいだろう)という考え方もあるでしょうし、弁護士歴◯年以上というキャリアを要件としたところで、実際の取扱件数が少なければ経験年数は専門性の有無とは無関係ですので、基準として意味がないですよね。

そんなわけで、弁護士会は、「~分野に力を入れている」等のあいまいな表現を推奨している有り様です。

これでは、どの程度の専門性があるのかさっぱりわかりませんよね(笑)。

一般消費者の視点にたてば、弁護士の専門性表示は、この弁護士に相談してみようか、依頼をしてみようかを決断するための重要な指標となりますので、医師、病院と同じようなきっちりとした専門性表示(皮膚科、内科、泌尿器科等)があって然るべきかもしれません。

しかし私はそれでも、弁護士の場合は、弁護士会の方針に賛成なのですね。

なぜか?

皮膚科のお医者さんのもとに、妊婦が担ぎ込まれても、皮膚科のドクターは困るでしょうし、誰もそんなことはしません。

しかし、離婚専門をうたう弁護士のもとに、刑事事件や従業員の解雇の相談などがもちこまれても、弁護士は困らないというか、きっちり対応します。

持ち込まれる相談を自分の専門外といって受け付けないようなことはなく、持ち込まれる相談が「法律」による解決が可能なものである限りは、分野を問わず受け入れてきたのが弁護士という人たちだったのです(少なくともこれまでは)。

つまり、弁護士の場合は、医師や病院ほどに専門性を謳う必要がそもそもなかったのですね。

それがここ数年でだいぶ様変わりして、〇〇専門を謳う弁護士、法律事務所も珍しくはなくなってきました。

なぜか?

そのほうがお客さんにとってわかりやすいからです。

 

近年の弁護士増員によりこの業界も競争が激しくなっており、顧客獲得のためには、ユーザーフレンドリーな消費者目線の広告、ウェブサイトの運営が大切となっています。

私のようなつまらない見栄や言葉の正確性へのこだわりを棄てて、とにかくお客様から依頼を受けやすいような◯◯専門!といったわかりやすい表現をしたほうが、お客さんとしても頼みやすいでしょう。

顔に出来物ができれば迷わず皮膚科医院を選択するのと同じ感覚です。

しかしそれでも私は◯◯専門とうたうことにはまだためらいをもっております。

なぜか?

そもそも弁護士はあらゆる分野のことをかなり広範かつそれなりの深さで勉強しなければならない職業ですので、それで◯◯専門などといっていたら、本当にそれ以外の仕事など引き受けられなくなってしまいます。実際、◯◯専門などと謳いながらも、実際には、ほかの分野の仕事も引き受けている事務所がほとんどでしょう。そうであれば◯◯専門と謳うのはまずいのではないですかと思うわけです。

もちろん、ある一分野に特化して他の弁護士にまけないほどの専門性を身につけているということは、たしかに利用者からみればわかりやすいですし、実際、そのような力量のある弁護士、法律事務所も多数存在することは事実でしょう。

極端な専門性を要求される分野、例えば医療過誤訴訟を専門特化して引き受けるような弁護士、法律事務所であれば、その専門特化の意味もわかります。

生半可な時間では、医療過誤を扱うに足りる医療に関する知識、考え方を身につけることができませんからね。

弁護士だからといって誰しも容易にできる問題ではないということです。

しかし、大多数の弁護士にとっては、ある分野に専門特化するよりも、できる限り多種多様な業界、多種多様な紛争を経験しているほうが望ましいことであると思います。

断言します。

一分野に絞った経験しかないままでは、世のなかの多種多様なトラブルを解決するための処方箋の引き出しがいつまでたっても増えていきません。

これでは弁護士は務まらないのです。

もちろん、未経験の分野の事件を引き受けることもありますので、この場合、依頼者からしたら、自分などではなく、より経験のある弁護士に依頼したほうがよいということはあり得ます。

しかし、あえて信念をもって言いますが、ある程度の経験を積んだ弁護士であれば、どのような分野の仕事であっても、経験に裏付けされた調査力、類推力、判断力を発揮して事件を処理していくものですし、大半の弁護士は実際そのようにしています。弁護士の職務においては、脳外科医が足の骨折手術ができなくて困るですとか、精神科医が心臓外科手術を依頼されて困るというような高いレベルの専門特化が要求されていないのです。

で、ここからが私見どころか偏見になってしまうのですが、私は、自分のことを◯◯専門と謳ってしまうと、お客様から、青島さんは〇〇分野ばかりやっているから、ほかの案件の経験が少ない(=相談ができない)と思われてしまうことを恐れます。

私は◯◯専門、◯◯分野に強いと思われるよりも、何を任せても大丈夫、とりあえず青島さんのところに相談にいく、と思われたいのですね。

万能と思われたいという見栄かもしれません(←自分の実力以上を望んでいると、日々、それなりに苦しいものです。。なんてね)

実は、マーケティングを勉強すると、また、弁護士探しをしているお客様のお気持ちを考えると、私のこの考え方は間違っていると指摘されます。

専門性を打ち出していないと、この弁護士が何が強いのか、何をしてくれるのか、その情報が少なくて、お客さんがこの弁護士に相談しようという決断ができない。

私のホームページを見ても、結局、何に強いのかわからない。

ほかのホームページを見たら、いかにも◯◯分野を専門に扱っていると表示されていたので迷わずそちらに決めた。

そのようにしてお客様(見込みの)を取り逃がしてく(すみません、言葉が商人ぽくて。でも商人なんですよ、実際)。

そんな場面は、今後益々増えていくでしょう。

各弁護士化の広告宣伝も、マーケティングに長けてきて、消費者目線のものが激増しています(但し、これと弁護士、法律事務所の力量とは無関係です)。

それでも、私は、今後も◯◯専門という表示をすることはないでしょう。

本当に◯◯分野しかやらないという状況が来れば、もちろんそうします。

そうでない限りは、やりません。

何度もお客様や初対面の方からこの種の質問をされて、毎回毎回、かえってわかりにくくなることを承知で、専門というものはないんですよetcという気の利かない回答をしてきたこの10年間。。

◯◯分野に特化している、専門は◯◯です、と言ってしまったほうが楽かもしれません。

お客さま受けもいいかもしれません。

それでもやはり、嘘は嫌なのです。

私は、医療分野などの例外は別として、特定分野に専門特化せずに、あらゆる事案に対応できる弁護士でありたいと思っています。

広くものを経験し、知っているほうが、調査力、判断力、文書作成力に優れ、お客様にもよりよい解決、智慧を提供できるはずであると強く信じているからです。

すべての分野はつながっています。ある分野の経験は、特定分野に限らず、ほかの事案に必ず参考になります。

自分の経験を特定分野に限定させないほうがよいし、その経験をまた広く次のご相談者様に還元させていければと考えております。

 

いやぁ、軽い読み物をご提供するつもりが、思い込み満載の暑苦しいものを書いてしまいました。

スミマセン。。

もちろんこれが専門ですと言って恥ずかしくないレベルの分野をいくつももてる弁護士が本当に素晴らしいと思います。

私?

まだまだですね(←なんていうとお客様がこなくなっちゃうから気をつけよう)。

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青島 克行

青島 克行弁護士・保育士・宅地建物取引主任者

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