窃盗被害にあった高級ブランド品リサイクルショップが、セコムなど警備会社を提訴した件

2014/6/17のANNニュースから。
 ←ごめんなさい。リンク切れになってしまいました。

報道によりますと≪高級ブランド品のリサイクルショップが、「防犯装置が作動せず、盗難被害にあった」としてセコムなど警備会社を相手に4000万円の賠償を求める訴えを東京地裁に提訴した≫とのことです。

防犯カメラの映像を見る限り、完全武装した人間が、バールで入口を叩き割り、わずか1分で犯行を終えてでていくさまは(もともとTBS Nes-iのリンクをはっておったのですが、そちらの映像がすぐに削除されてしまったためANNニュースを上記つけかえております。ANNニュースの映像ですと、この一部始終の手際の良さが省略されすぎてわかりづらくなってしまっております。スミマセン)、まさに窃盗のプロによる犯行と思わせるものです。ここまで熟達したプロが相手であれば、どんな警備会社と契約していても、犯行自体は完遂されてしまうのではないかという気がしないでもない。

白煙や破裂音が発生する警備装置が正常に作動していれば被害は防げたというリサイクル会社の主張に対し、セコムなど警備会社側は、正常に作動していれば被害が防げたとする根拠が不明との理由で、その主張を争っているようですですが、さて裁判の行方は。

警備会社が主張しているらしい「正常に作動していれば被害が防げたとする根拠が不明」「それゆえ、警備会社の責任が発生するものではない」との論法は、「正常に作動していたとしても、被害の発生は防げたなかったのかもしれない」「作動の有無と被害の発生とは(因果)関係がない」というに等しく、このような言い分がとおるのであれば、警備会社が契約者から責任を追及されることはありえなくなります。

では、結果が発生しても責任が追及されないのであれば、警備会社はなんのために存在しているのか。
この裁判は、警備会社の存在意義にかかわる裁判だと思います。

我々契約者の側から考えてみましょうか。
我々は、なぜ、セコムなどの警備会社と契約するのでしょうか。

(1)そもそも泥棒に入られないため?
(2)もし泥棒に入られたとしても、警報装置が作動して、盗まれずに済ませるため?
(3)もし泥棒に入られたとしても、警備員がかけつけてきてくれて、盗まれずに済ませるため?
(4)もし泥棒に入られたとしても、警備員がかけつけてきてくれて、犯人を現行犯逮捕するため?
(5)もし泥棒に入られたとしても、防犯カメラや警備員の目撃証言などのおかげで、犯人を事後的に逮捕するため?
(6)もし泥棒に入られたとしても、転売されてしまう前に、窃取品を取り戻すため?

以上の一部というか全部を目的として、我々はセコムと契約をしているということになりましょうか。

ではこのような我々の期待に対し、警備会社は、どこまでの義務を負っているのか。

警備会社が(1)「泥棒に入られない」というところまでの義務を負っているとすると、泥棒に入られた時点でアウト(警備会社の債務不履行)ということになります。これでは警備会社の責任の範囲が広すぎるでしょう。
(2)(3)についても、「盗まれずに済ませる」ところまでの義務を負っているとすると、盗まれてしまった時点でアウトということになりますので、警備会社が、ここまでの責任を負っている(喜んで負担する)とは考えにくい。
(4)(5)についても、「犯人を逮捕する」ところまでの義務を負っているとすると、犯人を逃した時点でアウトということになりますので、警備会社としては、ここまでの責任を終えるものではないでしょう。
(6)についても、結果的に犯人が検挙されたり、結果的に盗品が取り戻されたりすれば、それは理想ではありますが、必ずそのような結果となることまではやはり、警備会社としては保証できるものではなく、「盗品を取り戻す」というところまでの義務を負っているとすることはできないでしょう。

そうだとすると警備会社は何の義務も負っていないことになってしまう??

さすがにそんなことはありません。
警備会社の義務の範囲については、個別の契約の解釈にかかわる問題ですので、まずは契約書を確認しなければなりませんが、例えばセコムのウェブサイト(こちらをクリック→SECOM。個人向け、法人向けさまざまなサービスが充実しております)をみる限りでは、「警備機器を設置し、その機器が正常に作動し、その機器が現場の何らかの異常を感知したら、警備会社の警備員が現場に急行し、必要に応じて警察にも通報する」というところまでは警備会社の義務内容に含まれているといえそうです(個々の事例においては、個別の契約書の内容を確認してから判断する必要があります。しつこい)。

要は、警備会社としては、個々の契約内容に応じて、防犯体制を整えるところまでは義務として負担するが、被害にあわないだとか、犯人を検挙するだとか、そういう結果防止・犯人検挙に関する部分までは義務として負担できないとという立場だと思われます。

そうだとすると、契約者は、たとえば玄関に防犯カメラが設置されていたり、セコムのシールが貼ってあることによる、窃盗・強盗犯人に対する警告的、抑止的効果、防犯カメラの記録による犯人検挙の可能性を高める効果、というところを期待することはできても、結果的に被害が発生した場合の賠償まで警備会社に期待することはできないということになりそうです。

セコムのホームページをみてみますと、被害が発生した場合の保険を別契約として扱っているようで、サービス内容の取り揃えとしてはうまくやっているなぁという印象です。防犯契約とは別に、必要であれば、損害保険契約を利用してくださいという。

ただ、個別の防犯契約に基づく警備会社への支払額がどれほどあったのか。その金額が多ければ多いほど、被害にあってしまった契約者としては、警備会社は何をやっていたんだ!これで警備会社が責任を負わなくていいならば、一体なんのための防犯契約であったのか!という感情になりやすいことは事実だと思います。法的な話ではなく、人間の感情の話として。

本件の事例でも、会見を見る限りは、かなりの憤りの感情をもたれているようですね。

裁判所の判断は、感情論とは次元を異にしますので(あくまで、警備会社が契約上負っている義務の内容は?本件の場合、それが果されていたのかどうか?果されていなかった場合、本件被害結果とその果されていなかったこととの間に因果関係があるかどうか?という各争点を確定した事実をもとに理詰めで判断していきます)、法廷で感情論をいっても仕方がない面があるのですが、警備会社が負うべき責任の範囲について、個人的にはとても興味がありまして、判決の行方が気になるところです(でも結局、和解で終われば和解内容も報道されないし、裁判所の理詰めの判断もされないんだよなぁ。。)。

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青島 克行

青島 克行弁護士・保育士・宅地建物取引主任者

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