村八分による集団いじめによる慰謝料請求(大人のいじめ)

村八分|みんなでいじめれば怖くない?

今日は、大人のいじめについて考えてみたいと思います。

村八分|裁判になったケース

兵庫県某市某町での出来事です。
某町に住む2世帯(4名)が同じ町に住むそのほかの12世帯(25名)を相手に裁判を起こしました。
多数派25名が少数派4名に対し「行政に関わりのない個人的なお付き合いをいたしません」などとする通知書面を送りつけて、いわゆる共同絶交宣言ないし村八分をしたことから、少数派4名が社会生活上多大な精神的苦痛を被ったとして多数派25名に対し、各自慰謝料55万円と遅延損害金の支払を求めたものです。

村八分|事の発端

少数派4名のうちの1名(仮に「太郎」とする。)が経営する会社工場の屋上が、携帯電話の基地局として合意されたことが事件の発端となっています。

以下の事実経過を辿りました。

・太郎が、近所3軒に、基地局設置の工事で何かと迷惑をかけるなどとしてビール1ケースずつを配布したところ、受領が拒否された。

・太郎と少数派の別の1名(仮に「花子」とする。)が、隣近所の有志が参加するバスツアーに参加したところ、他の参加者から無視された。

・基地局設置工事が開始されると、「今回の建設は個人の金儲けには余りにも露骨に住民を無視したやり方です。付近住民を踏みつけてまでも金儲けがしたい性格の持ち主です」などと記載された書面が、太郎が経営する工場内で、何者かによって配布された。

・基地局設置工事に関する説明会(第1回)が開催されると、参加者は皆、説明を聞くという態度ではなく、太郎の悪口をいうものもいた。

・花子が、隣近所の女性が参加する旅行会に参加する掛金を積み立てていたが、これを突然解約され、掛け金が返金をされた。

・太郎宅に、上記冒頭の通知書が投函された。

・隣近所内の誰かが亡くなったときには世話役が各世帯に連絡するのが通例であったところ、その連絡が太郎らにはされなかった。

・太郎らが、弁護士を通じて、通知の撤回や謝罪等を求めたが、多数派25名の大半はそれを渋った。

・太郎らは、慰謝料の支払いを求めて神戸地裁社支部に提訴した。

バス旅行で全員から無視される。キツイですね。
おじさん、おばさんたちの楽しそうに見える集団の中、よくみるとふたりだけ無視されている人がいる。

積立金が自分だけ返金される。辛いですね。
まさに仲間からの除外。

差出人不明の怪文書のようなものが出回る。
誰が犯人というよりもまわりがみんな敵という恐怖。

葬式の連絡が自分の家だけこない。
もうどうしたらいいかわかりませんね。

ちなみに本件は、平成の時代、つい最近の出来事です。携帯電話の基地局なんて言葉がでてきますものね。でも村八分の話。

村八分|判決は?

第一審(神戸地裁社支部)も、控訴審(大阪高裁)も、太郎らの訴えを認めて、太郎ら各人に対する各40万円の慰謝料(精神的苦痛)の支払を命じました。
裁判所は、集団による共同絶交宣言を含む一連の行為が、もはや社会通念上許される行為を超えた「いじめ」ないし「嫌がらせ」にあたり、太郎らの人格権を違法に侵害するもとして、共同不法行為が成立を認めたのです。

近隣の人間関係であっても、いい大人であっても、このような形で共同体の人間関係から一部の者を排除するようなことは許されないというわけですね。
たしかに、引っ越しが頻繁でもない、容易でもない生活圏において、誰からも仲間はずれにされてしまったら、かなり辛いものがある。
このような切実な訴えに対する救済を与える裁判所(神戸地裁社支部、大阪高裁)の姿勢をみると、裁判所もすてたものではないとうれしい気持ちになります。

ただしかし。
このような判決が確定したからといって、これで人間関係が改善されるという保証はどこにもないのですね。
よそよそしい、互いに微妙に緊張、牽制しあうような人間関係がこれからずっと続くのであれば、それはそれで辛いものがある。
現に、第一審でも第二審でも太郎らが勝訴しているにもかかわらず、敗訴した多数派は、敗訴を潔く受け入れたわけではなく、最高裁まで上訴して争いました。
彼ら多数派が納得していないことは間違いないでしょう。

そもそも多数派25名はなぜわざわざ共同絶縁宣言などしなくてはならなかったのか?

携帯電話の基地局の設置によって太郎世帯が潤うことへの嫉妬?
周辺住民が反対していたにもかかわらず、企業への協力、自分だけの金銭欲を優先させたことへの恨み?
多数派にも言い分はあるのでしょう。間違いなく。

それが太郎らから裁判にされて、多数派が敗訴してしまった。

もともと太郎らにも嫌われる別の理由がたくさんあったのかもしれない。
時が解決すればよいのですが。。

出典
判例時報 平成26年7月1日号 p43
損害賠償請求控訴事件
大阪高裁平成25年(ネ)1214号、平成25・8・29民事4部判決、控訴棄却(上告〈上告却下〉)
一審 神戸地裁社支部平成24年(ワ)79号、平成25・3・26判決

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